ヨーロッパにおけるミードの歴史

「お酒の起源」である蜂蜜のお酒

皆さんは「ミード」と呼ばれるお酒をご存知でしょうか?「お酒の起源」や「世界最古のお酒」と呼ばれている蜂蜜を発酵させた甘口のお酒です。

お酒の歴史を勉強すると必ず最初に出てくるお酒なので、知っている人は知っているお酒ですが日本ではどこでも売っているわけではないので、知っているけど飲んだことはないという方も多いのではないでしょうか?

今回はミードの歴史について"リトアニアの蜂蜜酒ブルワリー"の視点から解説したいと思います。バルト三国やヨーロッパをベースにした記事なので日本で紹介されている記事とはまた違った歴史に触れられるかと思いますのでぜひご一読頂ければと思います。

 

お酒は「偶然の産物」だった?

「クマに荒らされた蜂の巣に雨水が溜まり、発酵してお酒になったのを通り掛かった狩人が飲んだ」約9000年前のこのエピソードがお酒の起源と言われ、庶民はもちろん歴代の王・女王や神話の神々に至るまで多くの人を魅了し飲み継がれてきました。

 

「ハネムーン」はミードが語源

中世ヨーロッパではミードは子宝に恵まれると信じられ、新婚夫婦が満月(Moon)の夜に蜂蜜酒(Honey)を飲んで子作りに励む慣習がありました。これが"ハネムーン"の語源とされ縁起の良いお酒として結婚の手土産にされていた歴史もあるのです。

 

「北欧のワイン」と呼ばれるミード

世界最古のお酒あるいは北欧の蜂蜜でできたワインと呼ばれるミード。数千年前にお酒の起源として存在していました。

ミードの歴史は地域によって異なり、ペルシアやインドでは8000年前、古代中国では紀元前7000年頃とされています。

紀元前の文明であるシュメール語やヒッタイト語でもミードに関する言及がなされていて、記述による最古の記録としては古代インドの聖典「リグ・ヴェーダ」(紀元前1000頃)に記されています。

 

 

バルト地域でのミードの歴史

北欧神話や海賊バイキングなどの歴史でも頻繁に登場するミード。取り分けバルト地域でミードの歴史について触れられているのは、ギリシャの地理学者であり哲学者のストラボン(紀元前64年〜24年頃)による「地理誌」。バルト海沿岸の地域で生活する”蜂蜜と穀物を使って飲み物を作っている”部族がいると言及されています。

イギリスの聖職者ウルフスタンの西暦890年の書物ではバルト人について”王や貴族は馬のミルクを飲む一方、貧しい者や奴隷はミードを飲む”と記載されています。しかしながらポーランドの冒険家はこれを否定し、ミードは農民や商人から貴族に至るまで広く飲まれていたと指摘しています。

 

リトアニアでのミードの歴史

16世紀にリトアニアを治めていたジグムント2世アウグストの頃のヴィリニュスでは毎週30樽のビールと30樽のミードが消費され、その後継のジグムント3世、ヴワディスワフ4世の頃にも多く消費されていたとされています。

リトアニアの貴族として有名であったラジヴィウ家では自家製の醸造所を設けていたほどで、その領地にはビール醸造に必要なものが残されており当時のリトアニアではミードはビールと同じ道具を使って醸造されていたと結論付けられています。

現在も蜂蜜大国として知られるリトアニアですが、当時から養蜂やお酒の醸造が盛んに行われていた歴史を伺い知ることができます。

ミードはリトアニアの昔話や民謡によく登場します。ミードは葬式、礼拝の儀式、宴の席で使われていた飲み物なので当然のことだとも言えます。

18世紀から19世紀にかけて森林伐採が進むと養蜂自体が難しくなりミード醸造も衰退し特別な機会にしか造られなくなっていきました。その人気と栄光は過ぎ去りミードは知る人ぞ知る伝説になっていったのです。しかし20世紀に入りその流れは変わります。

 

「リエトヴィシュカス・ミドゥス」の登場

バルト三国で唯一の蜂蜜酒専門の醸造所「リエトヴィシュカス・ミドゥス」の創業者であるアレクサンドラス・シンケヴィチュス氏は20世紀に再燃し始めた近代ミード醸造のパイオニアです。

1938年からカウナスやプリエナイという地域でビール醸造の腕を磨き、その後1959年に初めてミードの製造に着手しました。800リットルで始まったミード醸造はわずか2年後の1961年には30,000リットルまで増えていきました。

 

品質が評価され「国家遺産」に登録

1969年にはシンケヴィチュス氏はソビエト連邦(当時)の発明発見委員会により「リトアニアの蜂蜜酒」の製造方法を発見した者として認定され、他国にもその名が渡り1972年11月11日には英国女王エリザベス2世によって製造特許が与えられその品質が広く知られるようになりました。

その後、リトアニア国家遺産やEU地理的表示保護に登録される銘柄を手掛けるようになり今ではリトアニアだけに留まらず世界中で楽しまれるお酒となりました。

 

 

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