「ヴィーガン」の定義
昨今人気の「ヴィーガン」商品。「エシカル」「サステナブル」「プラントベース」などと並び商品がより良く修飾されるこれらの言葉はトレンドとなっています。
中でも特に議論されることも多いヴィーガンについて、1944年に世界で最初にできたイギリスのヴィーガン協会(The Vegan Society)協会が提示するヴィーガンの定義やその歴史を翻訳して解説していきたいと思います。
ヴィーガンはライフスタイルや価値観を指す
ヴィーガン(Vegan)とは「衣食やその他の目的で行われる動物に対する搾取や虐待を、実践できる可能な限り排除する価値観や生き方」を指す言葉。つまりライフスタイルそのものを指しています。
広義では、動物、人間、環境のために動物を使用しない代替製品を使用したりその発展を促すこと。“食”に関しては完全にあるいは部分的に動物が使用されている全ての製品の排除を実践すること。
ヴィーガンを取り入れる方法は様々です。プラントベースダイエットと呼ばれる魚介類や昆虫を含む肉製品、乳製品、卵、蜂蜜をはじめとする動物性食品の摂取を排除すること、動物から作られる素材や動物実験を経ている製品、動物を使った娯楽施設の利用を排除することでしょう。
ヴィーガンの歴史
ヴィーガン食生活については英ヴィーガン協会(The Vegan Society)の創設初期である1944年に定義されましたが、ヴィーガンそのものの定義が議論されるようになったのは遅く、1949年になってからでした。
「人類による搾取から動物を解放する考え方」がヴィーガンの定義として最初に提示されのちに「食、産業、労働、狩猟、解剖、その他全ての目的による動物の命の使用または搾取の終結を追求すること」と改められました。
ヴィーガンの定義や慈善活動の対象はこれまでに修正や改善が繰り返されてきました。1988年の冬に現行の定義が使われるようになりましたが、それでも言い回しなどが若干修正されることは度々ありました。
ヴィーガンは何を食べてるの?
ヴィーガンはいいこと尽くし。全く新しい食と味覚の世界があなたの前に広がるでしょう。ヴィーガンの食事は多種多様な果物、野菜、ナッツ、穀物、種子、豆類から成り、飽きることのない無限の組み合わせで提供されます。
カレーからケーキ、パイからピザ、あなたのお気に入りの食事は植物性の原材料に置き換えることでヴィーガンにすることが可能なのです。
ヴィーガンは食事のことだけじゃない
いかなる目的の動物搾取を排除し動物への哀れみの感情を持つことが、多くの人がヴィーガンというライフスタイルを選択する大きな理由の一つです。
アクセサリーや洋服から化粧品やシャンプーまで、動物を使用した製品や動物で実験を行なった製品はあなたが想像するより多くの場所で目にする機会があるでしょう。
幸いなことに、現在では供給しやすく安価な代替品がほとんどの場合で存在します。ヴィーガン協会が提供するヴィーガン商標だけでも6万点以上の製品が登録され、ヴィーガンはかつてないほど取り入れ易くなっていると言えるでしょう。
ヴィーガンのその他の側面
薬
現在、イギリス国内の全ての薬は人間が使用するのに安全であると判定されるには動物実験が必須となっています。しかしながら、ヴィーガン協会は医者から処方された治療や薬を排除することは推奨していません。死んだ目をしたヴィーガンなんて良いはずがありません。
あなたにできることは、主治医や薬剤師に可能な限りゼラチンやラクトースなどの動物性製品を含まない治療薬を依頼することでしょう。
慈善医療活動
もしあなたが慈善医療活動を行なっているのであれば、その慈善活動が動物実験を実施しているか知りたくなるものかと思います。
動物実験を実施しない多くの慈善活動が存在し、その替わりとなるテストを模索する団体への寄付を多くのヴィーガンは好んで実施しています。
エンターテインメント
ヴィーガンは動物搾取の促進に繋がるような選択肢は取りません。したがって動物園や水族館には行かず、ドッグレースや競馬に参加することもありません。
こうした娯楽の代替案は、救助された動物たちに安全で休まる家を提供する動物保護施設(Animal sanctuary)を訪れたり援助したりすることです。
なぜヴィーガンになるの?
動物のため
動物搾取を防ぐことだけがヴィーガンになる理由ではありませんが、ヴィーガンになったりヴィーガンでい続ける決断をするための重要な要素と言えます。
感情を持つ全ての生き物には命と自由の権利があると理解できているなら、動物に情を持って接することがヴィーガンを選択するきっかけになるかもしれません。
詳細はさておき、動物性製品を避けることは動物虐待や動物搾取に対する行動の第一歩としてわかりやすい選択肢です。
健康のため
しっかり計画的なヴィーガン食は健康な食事のガイドラインに沿っていると共に、私たちの身体に必要な栄養素を摂取できます。
イギリス栄養士会(British Dietetic Association)とアメリカ栄養士会(Academy of Nutrition and Dietetics)は、ヴィーガン食が年齢や健康状態に関わらず身体に適していると認識しています。
ヴィーガン食は血圧やコレステロール値を下げ、心臓疾患、2型糖尿病、癌になる確率を下げるというリサーチ結果もあります。
ヴィーガンになることは栄養や料理について学び食生活を改善する大きなきっかけになります。必要な栄養素を植物性食品から摂取することで穀物、果物、ナッツ、種子、野菜といった食物繊維、ビタミン、ミネラルたっぷりの健康を促進させる選択肢を与えてくれます。
環境のため
ゴミのリサイクルから自転車通勤に至るまで、環境に配慮した生活は我々みんなが理解しています。とりわけ二酸化炭素の排出量を抑えるために特に効果があるのは動物性製品を避けることにあります。これは"牛のオナラ問題"なんてもんじゃないんです!
なぜ肉や乳製品が環境に悪いのか?
肉製品やその他の動物性食品の製造には餌となる穀物や水の消費、牧場から食卓に並ぶまでの加工工程ごとに発生する移動手段に至るまで環境に大きな負担をかけています。
とてつもない量の穀物が肉製品の製造には必要で、計り知れない規模の森林伐採、動物の絶滅や生息地を奪うことに貢献してしまっています。ブラジルだけで560万エーカー(約2.2万平方キロメートル)もの土地が、ヨーロッパで消費される動物のエサとしての大豆生産が行われています。
こうした土地の存在で貧困層の人々が自分たちの食糧を育てる代わりに飼料作物の農作業を行うことになり、世界中での栄養失調を助長させる結果につながっているのです。
一方で、ヴィーガン食を維持するには信じられないほど少ない量の作物や水しか要しません。ヴィーガンを選択することは簡単で楽しくそして影響力のある形で環境への負担を減らす方法と言えるでしょう。
同じ人間のために
地球環境に配慮するならば、ヴィーガンは最適な選択肢です。プラントベースの生活は人間にとってもサスティナブルな生き方と言えます。プラントベースの食生活は肉や乳製品といった動物性食品を摂取する人に比べ3分の1しか地球上の土地を利用していません。
環境面や社会経済的な多くの問題による世界中での食や水の確保に対する不安が広がり、サスティナブルな生き方はこれまでにないほど求められるようになりました。
動物性製品を避けることは食物や他の資源の浪費を減らせる簡単な方法であるだけでなく、世界中で貧困層の人々を不釣り合いに苦しめる能率の悪い食のシステムを改善する最も簡単な方法なのです。
なぜベジタリアンじゃだめなの?
乳製品や卵の製造業による動物搾取の実態は、畜産業のそれに比べると公に知られていないことでしょう。
乳製品の製造では酪農には不要となる数えきれないほどのオスの子牛の犠牲(死)を要します。また牛乳の生産が減った多くの牛は屠殺され早すぎる死を迎えます。
同様に卵の生産に関しても、エシカル(倫理的な / ethical)でフリーレンジ(放牧の / free range)な卵でさえ不要であるオスのヒヨコは生まれたその日に殺されているのです。
エシカル・ミート?
我々が食べる肉が倫理的(エシカル)であると信じたいことかと思います。その動物たちが幸せな一生を送り、屠殺場では痛みや恐怖を感じることがなかったと信じたいことでしょう。
しかし悲しい現実は、フリーレンジやオーガニックと銘打たれたものでさえ、全ての生き物は我々と同じように死に対して恐怖を感じます。
生きている時にどのような扱いを受けたかに関わらず、屠殺場では全ての生き物が同じ死の恐怖を経験しているのです。
グッド・ニュース
良い知らせは、それに対して我々にもできることがあるということです。お店で買い物をしたりレストランで注文する時に、こうした動物たちを助けるという選択ができます。
動物性製品からヴィーガン製品に切り替える時はいつもこうした動物たちをかばう選択となるのです。
あらゆる地位や職業の多くの人がその利点を理解しヴィーガンになり、徐々に流行させることでこれまでになくヴィーガンになることは簡単になりました。
自分たちに聞いてみましょう。もし今、美味しい食事を食べ、より健康に暮らし、二酸化炭素排出量を抑え、自分たち人間以外の生き物を殺すことを避ける生き方が可能だとしたら、、、そうしてみませんか?