リトアニアビール発祥の町「ビルジャイ」

リトアニア北部の地下水源豊富な町

カウナスから車で北へ3時間ほどの場所にリトアニアビール発祥の町ビルジャイ(Biržai)があります。ラトビアとの国境に近いこの町はシンクホールでミネラルを豊富に含んだ硬水でも有名。リンクシュケイ(Rinkuškiai)というビール醸造所を訪ねてリトアニアビールの歴史を伺いました。

ビルジャイの町の真ん中にはシルヴェナ湖という大きな湖があり町全体が自然に囲まれています。必要以上に自然に手を加えない感じがとても好感を持てる町でした。リンクシュケイ醸造所に着くと、今回お話を頂くヴィダスさんが併設されたレストラン「アラウス・ケリアス」(Road of Beerという意味)に案内してくださり、リトアニアビールの歴史からお話し頂きました。

リトアニアビールはビルジャイで11世紀に始まったと言われています。当時は法規制もなく各家庭でビールを作っていてそれぞれが醸造所のようなものでした。「10世帯で20の醸造所がある」という冗談があったほどビール醸造はどこの家庭でも行われレシピも多様だったようです。

 

リトアニアビールの歴史

レストランの2階にはミュージアムがあり当時の樽や器具が飾られていました。リンクシュケイも元々は家庭での醸造から始まり、その味の評判が町から町へと広がっていったんだそうです。代々そのレシピを受け継いできたチーガス家は1990年に家族経営の醸造所として起業し、1991年にリンクシュケイとして最初のビールを完成させました。

1991年といえばリトアニアが旧ソ連から独立した年。会社としては25年ほどですがその歴史やレシピは大昔から受け継がれているとてもユニークな醸造所です。

 

リトアニアビールの醸造方法

続いて工場内を見学させて頂きました。オンラインでの管理を導入して大規模でも少人数で対応できるように整備されています。ビール醸造の工程にはライトビールで1ヶ月、ストロングビールで2ヶ月を要するそうです。手間暇を惜しまずレシピを守ることで品質と伝統の味を受け継いでいますが、一部の大手ではこの工程を7日間に短縮することで量産や低価格を実現しているとのことでした。

ビール瓶詰め前に17℃くらいにすることで酵母の働きを止め発酵が進まないようにする工程があるそうですが、一部の国内レストランなど短期間で消費が見込める取引先にはこの工程を入れずに消費期限の極めて短い高鮮度のビールも提供しているそうです。

 

シンクホールで生まれる天然水

工場を出ると今度は大きな穴にたまった水たまりに案内されました。これはシンクホールという現象によるものだそうで、ビルジャイの水と深い関わりがあるんだとか。

地下の地層が侵食などによって空洞化し地表面が崩落する「シンクホール」と呼ばれる現象があります。都市部では地下道を作って開けた穴などが原因になるようですが、ビルジャイでは自然現象として起こるそうです。

この現象により本来は交わることのない地層同士が重なりミネラルを豊富に含んだ他にはない硬水が生まれるんだそうです。リンクシュケイ醸造所も地下150mから汲み上げたその水でビールを造っているそうです。

 

世界一の国に匹敵するビール消費量

リトアニアでは一人当たり年間80リットルのビールが飲まれているそうですが、ビルジャイの町だけだと150リットルと倍近く。この数字は世界一のビール消費国チェコとほぼ同じくらいの数字だそうで、リトアニアビールが多種多様なのも納得がいきます。

最後にブランドショップにお邪魔しました。ビールの他にギラ(英名:クヴァス)と呼ばれる飲み物も扱っていました。リトアニアでは有名な飲み物でアルコール1%程度でルートビアのような味といったところでしょうか。リンクシュケイのギラはギネスビールのような真っ黒な色と泡。今までのギラの印象をすべて覆すような美味しさでした。

 

有名なシンクホール観光地

ヴィダスさんにこの近くにシンクホールの有名な場所があると言われ向かってみることに。

"Karvės Ola”(カルヴェス・オラ)と呼ばれる場所で幅12m、深さ13m、200年以上前にできたシンクホールとのこと。英語では"Cow Cave"(牛の穴)と呼ばれ、シンクホールができた当時、家畜の牛が消えてしまったが付けていた首輪が穴の近くに落ちていたため牛はこの穴に落ちてしまったとされ、それ以降そう呼ばれるようなったそうです。

ビルジャイの観光スポットのようで、リトアニアでは名前を知ってる人も多かった印象です。地理の教科書に出てくる感じでしょうか。カルヴェス・オラの周りにもシンクホールが多数ありました。

もう一つの観光名所はビルジャイの中心地から北へ5kmほどのところにあるキルキライ池展望台(Kirkilai lakes and Tower reviews)。方舟をイメージした外観で最上階までは階段での移動。しかもその階段が鉄骨の骨組みでできているので下を見ると足が止まってしまいそう。

最上階からはキルキライ池やビルジャイの自然が一望できます。入場無料の展望台なのでビルジャイのビール巡りをされる際はこちらに立ち寄るのも良いと思います。

 

 

April.2017
by hshmtyshk

 


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