オーソドックス系ミードの4スタイル

2025年2月13日

前回の記事「ミードの4大ジャンルについて」でミードには大きく4つのジャンルがあると解説させていただきました。今回はその4ジャンルをそれぞれ深掘りしていく第一弾として「オーソドックス系」についてさらに詳しく解説したいと思います。

ミードの4ジャンル

  • オーソドックス系
  • フルーツ系
  • ハーブ&スパイス系
  • 特殊系(その他)

はちみつ・水・酵母だけの「オーソドックス系」

お酒は糖分が酵母の働きで分解されてアルコールと炭酸ガスになるアルコール発酵によって生まれます。はちみつは糖分のかたまりですから酵母があれば発酵が起こるわけです。

ただ、はちみつだけだと発酵がうまく進まないので蜂蜜に水を加えてマッシュという状態を作って発酵に進みます。つまり、ミードはハチミツと水と酵母の3つの原料があればできてしまうのです。

今回ご紹介するオーソドックス系はこの3原料だけを使って作られる最もシンプルなスタイルを指し、ごまかしが効かないという意味で一番難しいスタイルとも言われています。このスタイルで良質のミードを生産する生産者はかなりの腕利きということになりますね。

はちみつの使用量やアルコール度数の強弱によって細分化されたスタイルをご紹介していきたいと思います。

・トラディショナルミード / ショーミード

まずは全ての基準となる「トラディショナルミード(Traditional mead)」です。伝統的なミードという意味を持つこのスタイルは蜂蜜の個性が最もよく現れる性質、生産者の特徴をよく示していることなどから「ショーミード(Show mead)」とも呼ばれています。

前述の通り原料は蜂蜜・水・酵母のみ。アルコール度数はだいたい約7〜14%程度である場合が多いようです。原料が限られるため蜂蜜の個性がよく現れ、蜜源による蜂蜜の違いやミード造りのためにブレンドされた百花蜜の個性を感じることができるスタイルです。

酵母の種類も発酵に影響がありワイン酵母やビール酵母、日本では清酒酵母(日本酒)を選ぶなどで個性を与える役目も担っています。当店が扱うリトアニア産のリエトヴィシュカス・ミドゥスのミードでは創業者が元々ビールの醸造士だったこともありビール酵母を採用しています。

後述のショートミードやサックミードと比較する際には「ミディアムミード(Medium mead)」と呼ばれることもあります。

 

・ショートミード / ハイドロメル

続いては醸造にかかる時間が短めの「ショートミード(Short mead)」です。使用する蜂蜜と水のうち蜂蜜の比率を少なくすることで発酵にかかる時間も短縮され完成までの時間が短くなります。

その結果、アルコール度数も約7%以下と低く「ハイドロメル(Hydromel)」とも呼ばれています。”Hydro”は水、”mel”は蜂蜜の意味がありゴクゴクいける”水っぽい蜂蜜”と言ったところでしょうか。

昨今ではクラフトビール業界で3.5〜5.0%のアルコール度数の低いビールに”セッション”というワードがよく使われ、セッションIPAなどのスタイルを聞いたことがあるかもしれません。セッションには”会合”や”集会”などの意味があり集まった時にサクッと簡単に飲むスタイルということでアルコールの低いものを指すようになったとか。

ショートミードもアルコールが低いスタイルとしてこのトレンドにあやかって「セッションミード(Session mead)」と呼ばれることもあります。

またショーミードとショートミードは聞こえは似ていますが異なるスタイルになるのでご注意を。

 

・サックミード / グレートミード

対照的に濃いめの仕上がりになるのが「サックミード(Sack mead)」です。水に対して使用されるはちみつの割合が多く、濃厚でしっかりした甘さがあることから「グレートミード(Great mead)」とも呼ばれています。

アルコール約14〜20%程度と他に比べて度数が高く発酵時間も長いのが特徴です。アルコールが高くて濃厚なタイプだとリキュールを想像しますが、製法はトラディショナルミード同様に3原料のみのいわゆる「醸造酒」であることには変わりありません。長時間発酵で酵母の働きを管理するのに手腕が問われるスタイルだそうです。

 

・スパークリングミード

最後にガスの入った「スパークリングミード(Sparkling mead)」。その名の通り発泡しているスタイルを指します。

シャンパンなどのスパークリングワインでは瓶内二次発酵という工程で砂糖を加えてガスを生むことがありますが、ミードでは砂糖の代わりに蜂蜜を加えてその役目を果たしていると。つまりオーソドックス系で紹介してきた3原料の中で完結できるわけですね!

とはいえ、現代では出来上がったミードに後から炭酸ガスを加えてスパークリングにする手法もあり、トラディショナルな製法かと言われると議論の余地があるかもしれません。炭酸ガスは風味を与えませんので味を構成する原料としては3原料のままで実現できるというところでオーソドックス系としてご紹介させていただきました。

フルーツ系やスパイス系のミードにガスを加えてスパークリングにすることも可能なわけですから、広義ではどのジャンルにも属するスタイルと言えます。

「オーソドックス系」まとめ

基本的な工程はどれも一緒なオーソドックス系。(スパークリングだけ工程が増えますが、、、)ご紹介してきた4スタイルをまとめると。。。

・トラディショナルミード

別名:ショーミード、ミディアムミード
原料:蜂蜜、水、酵母のみ
度数:アルコール約7〜14%程度
特徴:全体の基準となるミード

・ショートミード

別名:ハイドロメル、セッションミード
原料:蜂蜜、水、酵母のみ
度数:アルコール約7%以下
特徴:蜂蜜少ない、発酵時間短い

・サックミード

別名:グレートミード
原料:蜂蜜、水、酵母のみ
度数:アルコール約14〜20%以下
特徴:蜂蜜多い、発酵時間長い

・スパークリングミード

原料:蜂蜜、水、酵母のみ(+炭酸)
度数:アルコール度数はさまざま
特徴:ガス入りのミードの総称(他ジャンル含む)


おわりに

というわけで「オーソドックス系ミードの4スタイル」についてご紹介させていただきました。日本でもミードは楽しめますがスーパーなどの量販店には並んでいないことが多いので見かけた時はチャンスですよ。

当店ではリトアニア産のミードを揃えていますので、興味のある方はそちらもぜひチェックしてみてください。

それではまた。

 

当店オンラインショップで取り扱っているリトアニア産ミードは主にこの3種類。少し割高ですがAmazonでも買えます。(名前で検索してみてください!)

 

 

[筆者]

橋本佳樹

リトアニア製品の輸入販売を行うスベンテ合同会社代表。社会人時代に音楽業界、芸能業界でのキャリアを経て海外へ留学。現在の妻と出会いリトアニアを知る。帰国後は異業種の輸入業に挑戦するため輸入商社で修行ののち独立し起業。リトアニアのお酒を中心に輸入業を経営しながらリトアニアの情報発信を行なっています。