その他の特殊系ミード6スタイル
今回はミードの4大ジャンルの最後「特殊系(その他)」についてご紹介したいと思います。「ミードの4大ジャンルについて」の記事もぜひ呼んだ上でこちらの記事を読んでいただくとより理解が深まると思います。
- オーソドックス系
- フルーツ系
- ハーブ&スパイス系
- 特殊系(その他)
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もはや実験的な「特殊系(その他)」
これまでの記事で蜂蜜、水、酵母の3原料のみで作られるオーソドックス系、フルーツを使ったメロメル系、ハーブ&スパイスを使ったメセグリン系の3種類のミードジャンルをご紹介してきました。
そしてその3種類のどれにも属さないのが今回ご紹介する特殊系です。順番にご紹介していきたいと思います。
・ボシェ(Bochet)
カラメル状に焦がした蜂蜜を使用したミードを「ボシェ」と呼びます。蜂蜜に水を加えたマッシュを煮沸して香ばしさを与えた上で発酵を行う。焦がすほど完成するミードは苦味が増し色合いが濃くなる。
フランス語で調理や煮沸を意味する言葉がボシェの由来で、蜂蜜に一手間加えてからお酒にするというわけですね。
・ブラゴット(Braggot)
ビールとミードのハイブリットが「ブラゴット」。ビール醸造に欠かせない麦芽(モルト)が使われているのが特徴で、基本的には「蜂蜜と麦芽を混ぜたものを発酵させたお酒」というのが一般的な解釈のようです。
蜂蜜とビールというと「ハニービール」というスタイルをクラフトビールなどで聞いたことがあるかもしれません。明確な定義はないもののハチミツの割合が少ないとハニービール(ビール寄り)でハチミツの割合が多いとブラゴット(ミード寄り)という切り分けをしているようですね。
ウェールズ語でモルトを意味する“Brag”に語源があり、ハーブやスパイスでの風味付けが主流だった時代(ビールが登場する前)に飲まれていたお酒なので伝統に倣うとホップは使用しないんだそうです。
後日別の記事でブラゴットだけをテーマにしてさらに深掘りしてみたいと思います。
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・アサーグリン(Acerglyn)
メープルシロップを使用したスタイルは「アサーグリン」と呼ばれています。メープルシロップもとても甘いので蜂蜜無しでも成立しそうですが、蜂蜜を含まないとミードにジャンルされないのでメープルシロップとハチミツを使用するのが一般的です。
メープルを含むカエデ属の植物は”Acer”と呼ばれ、お酒を意味するウェールズ語”Llyn”が付いたのが語源です。
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・オキシメル(Oxymel)
「オキシメル」はお酢と蜂蜜をミックスした飲み物を指し、必ずしもミードである必要はありません。ただミード業界でも発酵を終えたミードにお酢(主にワインビネガー)を加えてオキシメルを造ることもあるようなのでミード業界でも名前がたびたび挙がっているようです。
元々は蜂蜜とお酢を混ぜたものが薬として飲まれていたようで、ネットでも先にヒットするのは健康への有効性を併記した薬用ドリンクとして紹介されているイメージが強くハーブを使ったレシピが多かったです。
造るというより混ぜるイメージなので自作できるカクテル薬酒の側面が強いかもしれません。お酢にも穀物酢、米酢、黒酢、リンゴ酢、バルサミコ酢(ワインビネガー)など種類があるので自分で試してみるのも面白そうですね。
ラテン語や古代ギリシャ語に語源があり、酸”Oxy”と蜂蜜”Mel”という意味があります。ミードから作ったオキシメルは薬用ハーブの成分を抽出するベースリカーとしても使われることもあるそうです。
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・サワーミード(Sour Mead)
野生の酵母と乳酸菌を使用することで酸味を引き出すのが特徴の「サワーミード」。ヨーグルトのような酸味は蜂蜜酒ミードとは相性が良さそうですよね。
クラフトビール業界でもサワーエールやランビックといったスタイルがありますが、それと似たスタイルとイメージすると良いでしょう。
・ロドメル(Rhodomel)
バラを使ったミードは「ロドメル」と呼ばれています。部位は問わないようですが一般的にはローズヒップ(バラの果実)、バラの花びら、バラから抽出したオイルなどを使って造られます。ローズヒップもハチミツも健康寄りのイメージなので魅力的なコラボレーションですよね。
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「特殊系(その他)」まとめ
ということで特殊系ミードのスタイルについて詳しくご紹介させていただきました。要約すると。。。
- ボシェット(Bochet):蜂蜜を焦がしたカラメルミード
- ブラゴット(Braggot):蜂蜜と麦芽のモルトミード
- アサーグリン(Acerglyn):蜂蜜とメープルシロップのメープルミード
- オキシメル(Oxymel):蜂蜜とお酢のビネガーミード
- サワーミード(Sour Mead):蜂蜜と野生酵母と乳酸菌のランビックスタイル
- ロドメル(Rhodomel):蜂蜜と薔薇のローズミード
おわりに
「その他の特殊系ミード6スタイル」いかがでしたでしょうか?中には自分で試せそうなカクテルもあって試してみたくなるものもありましたね。
色々参考にしているとやはり歴史的にはハーブやスパイスを使っているメセグリンスタイルが主流でそこから派生した特殊系もハーブなどと親和性が高そうなスタイルが多い印象でした。
当店で扱っているメセグリンスタイルのミード「スタクリシュケス(Alc.12%)」や「トラカイ(Alc.15%)」をベースに、ビールやお酢と混ぜたりローズヒップティーを浮かべたり結構面白そうなカクテルが体験できそうな気もしました。
実験的ではありますが興味のある方は自作でカクテルを飲み比べてみるのも良いのではないでしょうか。
4回にわたって掘り下げてきたミードスタイルの紹介は以上になります。個々に掘り下げたいテーマも見えてきたので改めてご紹介できればと思います。
それではまた。
当店オンラインショップで取り扱っているリトアニア産ミードは主にこの3種類。少し割高ですがAmazonでも買えます。(名前で検索してみてください!)
- スタクリシュケス(Stakliskes)Alc.12% - ジャンル:ハーブ&スパイス系「メセグリン」
- トラカイ(Trakai)Alc.15% - ジャンル:ハーブ&スパイス系「メセグリン」
- ミルダ(Milda)Alc.10% - ジャンル:フルーツ系「メロメル」
[筆者]
橋本佳樹
リトアニア製品の輸入販売を行うスベンテ合同会社代表。社会人時代に音楽業界、芸能業界でのキャリアを経て海外へ留学。現在の妻と出会いリトアニアを知る。帰国後は異業種の輸入業に挑戦するため輸入商社で修行ののち独立し起業。リトアニアのお酒を中心に輸入業を経営しながらリトアニアの情報発信を行なっています。